極上カシミア・旅するニット

皆さんが手にしてるカシミアニットは、実は沢山の工程を経てあなたのもとに届いています。
今回はそのカシミアニットがどうやって作られるのか、カシミアの長い旅の様子をご紹介します。

出会い
First contact

私が極太のカシミアマフラーを発見したのは、2009年の展示会です。
このブランドは10年ほど前に、取引のある日本の問屋さんで扱っていました。


その時に買ったセーターは私のお気に入りでした。

展示会でこのブランドが出ていたのを発見し、
それから直接輸入することになり、毎年スヌードやマフラーをオーダーしていました。

2014年冬の事。
今まではデザイナーのセルジオさんがいつもメールをくれていたのに、最近は連絡は奥様からでした。

そして展示会があった2月、このブランドのブースを見つけると、中にはいつものセルジオさんがいません。

男の方に

「セルジオさんいらっしゃいますか?」と聞くと
「彼はここには居ないんだ。 彼は・・・亡くなったんだよ」

と言われてびっくりしました。






ご病気で亡くなられたのだそうです。
(元気な時のセルジオさん)

ブースの中にいた男性は、カシミアファクトリーのルカさん。
長いこと セルジオさんの製品を作ってきた方です。
これがルカ&ダニエラとの出会いでした。
左からダニエラ・マリナ(セルジオさんの奥さん)ルカ

カシミア製品がどうやってできるのか、興味があった私は
「どうやってカシミアニットが生まれるのか見てみたい」と言いましたところ、
ルカが「イタリアに仕事で来るならその時にうちの街に来ればいいよ」と言ってくれて
今回の旅が実現しました。

さあ、あなたのセーター、ストールはどうやって作られるのでしょうか。

旅が始まります。

北を目指して
Go to north

問屋街で買い付けが終わったあと、
私は荷造りをしてルカの住む町を目指しました。

ミラノからローカル線でさらに1時間ほど。

最寄りの小さな駅に到着するとルカが待っていました。

私のスーツケースを運んでくれるルカ。

荷物を車に乗せて、さらに40分。
朝出発し、もうお昼くらいです。

ルカの住むビエッラという街は、ニットの工場が沢山あったそうです。 昔は600くらい、今では200程度だとか。
だれも跡継ぎをしないので閉鎖した工場も多く、かなり数が減りました。

中国やアジアの安い工場との価格競争で、イタリアの技術が減ってしまうのは残念なことです。

街中のビルの中にダニエラのオフィスがあり、
そこでカシミアの原毛について説明を受けました。

ルカはニット製品を通る会社ですが、
ダニエラはその作るニッティングマシンを
海外に輸出する仕事で、二人とも経営者です。

ルカ
「今日、僕はひろみの先生だ。カシミアについて教えるよ」そういって、袋から原毛を出しました。

カシミアの原毛はいろいろありますが、
中国のカシミアヤギが細くていいのだそうです。
次がモンゴル。

中国のカシミア原毛は14-15マイクロに対してモンゴリアは16.5マイクロで、その分強くなります。

イランあたりの原毛は硬く、色も濃い色でした。

カシミア原毛の中でもトップスと呼んでいるカシミアは滑らかで
コーミング(髪の毛を梳かすような処理)するため、素晴らしい手触りです。

普通のカシミアは原毛の1㎏から30,000メートルの糸ができますが
トップスは細くって繊細なため1㎏で120,000メートルの糸ができます。
それだけ、細くてしなやかなんですね。

カシミア糸はオイルと水を入れているため、最終的にはそのオイル分を洗って流します。

左が普通のカシミア、右はトップス。

原毛のサンプルを貰ってきましたので、事務所にお越しいただいたときにでも
触ってみてください。

次はいよいよ紡績工場へ行きます。

糸を紡ぐ
Make yarn

ルカと一緒に紡績工場に行きました。原毛を糸にする工場です。

ずらりと並ぶマシンは圧巻です。
工場の建物は二つあって、片方は色のついた糸を 作り、
白は白だけの場所で生産されます。

ですから、他の色の細い糸が混じらないように気を付けているわけです。
それにもかかわらず、製品が上がってくると細い繊維が中に入り、汚れのように見えてしまう。

そのことは、当店のお客様でしたら
私のしつこいくらいの商品説明を読んで十分ご存知だと思います。

原毛がこのような塊でこの工場に届きます。

穴をあけて原毛をチェックし、どのくらいの長さの糸ができるか判断するのだそうです。

中国から届いた原毛は柔らかく、イランから届いたものは茶色が濃くて硬い感触でした。 綺麗な薄い色に染めるには、白いヤギの毛でなくてはいけません。

茶色が濃いものは黒にしたり紺にしたり強い色になります。

カシミアと言っても、「本当にカシミア?」と思うほどの硬さの物はきっとイラン製の原毛から作った糸なのでしょうね。
当然白い糸は高価で、それを淡く染めた糸もまた高価なのです。

説明してくれるマウリッツォさん。

これは染めた原毛。ここから色の糸になります。

ミックス糸ですね。

糸の強度を確認中。

糸の強度を確認中。

すべてコンピューターで管理されて水、油の調整をしています。

建物が違うプラントからこのダクトを通って原毛が運ばれます。

出来上がった糸はボビン、と呼んでいますが
こんな糸の巻きになります。

これはファンシーツイードのようなネップがあるタイプ。綺麗ですね。

工場の2Fの部屋には出来上がった糸の堅牢度、耐久性をテストする器械がありました。

こうして出来上がったのが今回のバイカラーカシミアの糸です。

淡くてクリアーな色。
そこには多くの人の手間と労力、時間が費やされています。

この製品を買うということは、それらの人の労力を評価するのと同じです。
そして、あなたはその価値がわかる目の肥えた人、ということになります。

あなたはもう、このカシミアストールを予約したでしょうか。
すでに予約しているなら、秋にはきっと幸せな気持ちになれるはずです。

さあ、次は糸を編んで製品を作る工場へ行きます。

ルカ先生、マウリッツォ先生、ありがとうございました。

時を編む
Production

紡績工場のあとは、糸をニットとして編む工場へ。

ルカの工場も機会がありますが、小さな機械だけになってしまったので
色々な種類のニットを作っている工場に連れて行ってもらいました。

ずらりと並ぶニッティングマシーン。

コンピューターで入力、調整して製品を編み上げます。

これはすごく古い機械だそうです。

編みあがった糸はこのようなニット生地に。

模様編みです。

ニット生地が出来上がったらウォッシュします。
紡績した時の油を落とし、縮絨をかけます。こんな糸が

ウォッシュされて

こんな製品に。

ミシンでジッパーを付けたり

縫い合わせたりして形になります。
こうやって出来上がった製品は、これで終わりではありません。

私にスカウトされ、段ボールに詰められ、飛行機に乗って日本にやって来ます。

ようやくタプレスタイルに届きました。

そして撮影された製品がこちらです。

長い長い旅をして、さらにまたあなたのところへとお嫁に行きます。

こんな素敵な旅物語があるストールを、手に入れてみませんか?

製品だけでなく、沢山の人の気持ちも一緒に編まれたストールはあなたを温かく包んでくれるでしょう。



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北イタリアの週末
Weekend in northern Italy

ニット工場に見学に行った後は、この週末に泊まるホテルに連れて行ってもらいました。

一日5組しか宿泊できないB&Bですが、広々として素敵な空間です。

周囲には池があり、魚釣りができます。

左がオーナーのパオラさん。
私と同じ年ということで、ダニエラも同じ年で女3人集まると・・・
手の皺が・・!白髪が!という話になります。(笑

釣り人が魚を釣り上げました。

広々としたサロン。

ちなみに一泊70ユーロです。
私が最初に予約したホテルは110ユーロだったのでかなりお得な感じです。

夜はルカとダニエラが隣村のレストランに連れて行ってくれました。

ワインを作るために葡萄をすりつぶす
機械が店内に飾ってあるrestaurant。

13-14世紀の頃の建物の中にあります。

BBQの写真を撮ろうとしてルカとダニエラが
体一部しか入っていません。

ごめん。(笑)

ペスカトーレは漁師という意味だそうで、
こちらのペスカトーレはクリームソースでした。

エビの味が効いてて濃厚でした。

ここで面白い話をいろいろ聞きます。
ルカはそそっかしい性格らしい。

ある日、ガスステーションでガソリンを入れたルカ。
入れ終ったあとに出発すると、少しして後ろから車がぴったりついてきた。

ルカは「なんで後ろの車、俺についてくるんだ?」と疑問。
しかも後ろからパッシング。

「よし、巻いてやれ」

ルカはアクセルを目いっぱい踏み、引き離そうとしました。
しかし、相手も負けていません。必死に追いかけてきます。

逃げるルカ。

追う後続車。

「しつこいな!」

ずっとついてくるので諦め、路肩によって相手が行き過ぎるのを待とうとしました。
しかし、ルカが止まると相手も停車し、車から降りてきました。

ルカは言いました。

「なんだよ、なんでついてくるんだ!!」

「あなた、ガソリンスタンドに財布忘れてましたよ」

善意の人はそういって財布を差し出しました。
こんな面白エピソードのあるルカさん。

暖かなカシミアを作るだけあって、気持ちも暖かくなります。

いかがでしたか?

カシミアの原毛から糸になり、ニットになり、ルカのところから
私たちの元にやって来ます。

是非この暖かさを感じていただけたら嬉しいです。